今回の旅行の最大の目的は台湾の古都「台南」に行くことだ。ここは先生の故郷でもある。
台南の名物料理を食べる他に、いろいろなところを巡り、烏山頭ダムの見学をすることだ。
まず、孔子廟で壁に掛けられた「大学」の文章を見た。それは学校で邱先生に習った「大学」ではないか。
心の中は興奮と感動でいっぱいになる。
そして、名勝古跡の一つ「林百貨店」屋上にはちょっと壊れた神社の鳥居があり、国民政府の銃弾跡が壁にそのまま残されていた。
いつもの台北市は高層ビルが立ち並び、人々は忙しそうに街を行き交う。
日本の都会と変わらずどんどん開発されている。
しかし台南はなぜか私の故郷に帰ってきたみたいに感じた。赤モクレンがいっぱい落ちた街道と共に、時間がゆっくりと流れ、全てを温かく包み込む。
烏山頭水庫周辺を散策していると100年前にタイムスリップしているかのようだった。
工事に携わった方々、またその家族の息吹きが爽やかな風と共に私の頬を撫でる。
ここは台湾と日本の歴史の流れを知る貴重な場所だ。本当に残念だが、日本の教科書に掲載されていないし、日本人はあまり知らない!
八田与一さんの奥様外代樹さんは、戦後、日本人と一緒に台湾から引き上げることを拒み、このダムに身を投げられた。正に夫が生涯で最も偉大な事業を成し遂げたものに命をかけて守ろうとした。
お子様達を残しての決断は、計り知れないが、ご自身が人柱となって、台湾と日本の架け橋となられたのではと思う。
この度、台湾と日本の密接な繋がりをより一層肌で感じ、私も又両国の未来が平安で、ますます発展していくことを祈る。
最後に老師と案内してくれた楊さんの細やかな心配りに感謝し、楽しい旅を一緒にしたクラスメイト達との縁が深まった、喜びに浸りながら、我が家に戻った。
心より全てに感謝する。
横濵 美枝 ( よこはま よしえ )